2007/05/22

A Whole New Mind

一昨年のもっとも刺戟的ともいえる書籍のタイトルです.

ホント おもしろい本だった.
やっぱり未来について語ることほど,知的好奇心を満たすものはないと思う.

来日中の著者に会って来ました.

いまは左脳中心の時代から「右脳」中心の時代へと切り替わっていく時期です.
その背景として3つあります.
Asia,Automation,Abundanceの3つです.
これらに共通する大きな特徴として,Routineが挙げられるといえるでしょう.

いま多くの産業は,Asiaにその拠点を移しています.
それもとりわけ「情報」関係のものです.
インターネットの登場・普及にともない,ソフトな通信costはほぼゼロです.
もちろん工業関係の産業が低賃金の諸国へその中心を移していることは言うまでもありません.
そして数々の「こと」がAutomation化されています.
会計の仕事や税理士がやっていた仕事などもコンピュータ・ソフトを使うことで低costで行えるようになっていたりします.また弁護士などに依頼をすることもアメリカでは,それらを簡略化させ,低コストに抑える仕組みなどが登場しているようです.
Technologyの発達ですね.
次にAbundanceです.
物的充足を果たした現代では,単なるUtilityだけではダメだということですね.
これに関連して面白いのは,「空間産業」というものが振興しつつあるということ.
つまり「貸し倉庫」みたいなものですね.モノが溢れ,収納する場所にすら困るようになってきている.

左脳が中心となる時代は,上記の3つによって,その影響を小さくしつつあります.

1つ象徴的な言い方で面白かったのは,MBAからMFAへ,という言葉.
MBAとは,Master of Business Administration.
そして,
MFAとは,Master of Fine Arts

いまやGMでさえ,「われわれの事業は,アート・ビジネス」だと述べている.

これからの時代を支える象徴的な人材は,“Creators & Empathizers”(創造型人間&共感型人間)だということです.

そして“Creators & Empathizers”に求められる6つのsenseというのがあります.
従来の価値観と比較して

  1. 機能・効果 (Function) ⇒ デザイン (Design)
  2. 議論・論証 (Argument) ⇒ 物語り (Story)
  3. 焦点・集中 (Focus) ⇒ 協和・交響 (Symphony)
  4. 論理・理詰め (Logic) ⇒ 共感・感情移入 (Empathy)
  5. まじめ・真剣 (Seriousness) ⇒ 遊び・ユーモア (Play)
  6. 蓄積・集積 (Accumulation) ⇒ 意味・意義 (Meaning)

このようなことが言えそうです.
6つそれぞれ取り上げて,細かく記述できそうなくらい興味深い概念ばかりです.
1つずつ取り上げて詳細な検討をしてみたいと思います.(いつかね)

これからは,「コンセプト」が重要だとも彼は言っています.

この本はすごく面白いので,またいつか書こう.

そうだ,ピンクはロー・スクールに行ってたみたい.
そして,日本のマンガにずいぶん感銘を受けたみたい.(いまアメリカでブームがすごいらしい.)

2007/05/21

Peter F. DruckerのいうInnovation

経営学の神様ともいわれるDruckerのinnovationをめぐる言葉です.

  • 企業の目的が顧客の創造であることから,企業には2つの基本的な機能が存在する.すなわちマーケティングとイノヴェーションである.
  • イノヴェーションは事業のあらゆる局面で行われる.
  • 顧客の欲求を変化させ,新しい欲求を創造し,古い欲求を消滅させるイノヴェーションの可能性・・・・・・顧客の欲求を満足させる新しい方法を生みだし,価値のコンセプトを変え,より大きな満足を可能とするイノヴェーションの可能性・・・
  • イノヴェーションは,事業にとって,マーケティングの目標を達成する手段であるばかりでなく,それ自体,事業が目的とし,かつ逆に影響を受ける1つのダイナミックな力である.
  • イノヴェーションとは,顧客にとっての価値と満足に他ならない.
Druckerの言葉は,ものすごく示唆に富んでいて,いわゆるビジネスにいる人たちとはずいぶん違った発想をしています.
さまざまな人から尊敬を集めるDruckerの魅力の1つですね.

ここでのポイントは,供給サイドではなく,需要サイドに,innovationの原泉がある,ということでしょうか.「誰かのために」 ・・・ 変わらなければいけないのです.
決して 独りよがりではいけない.それはビジネスだけでなく,どんな人間関係においても同じことがいえるのだと思います.

こうして語源やDruckerの言葉をみていると,innovationというのは決して,技術や経済のための言葉ではなく,日常的な生活のなかにあるものだということです.
需要 という 相手にたいして,新しい「経験」をつくること,それこそがまさにinnovationといっても過言ではないと思います.

“Innovation” と “Invention”

最近,いろんな場面で使われる「Innovation」について考察してみたいと思います.
Innovationとはなんでしょうか.
まずは語源から紐解いてみたいと思います.
innovate とは,ラテン語の innovātus に由来しており, innvāre = to renew, alter というような意味をもっています.そして, IN- + novāre = to make new を示します. novus = new です.つまり,なにかを新しくするということです.
ちなみに辞書をみると,
1. <1548-1818> 変える,(新しい事,物を)取り入れる
2. <1597> 革新する,新生面を開く
というような使われ方をしています.

innovateの名詞形がinnovation で, (L.) innovātō に語源をもちます.
1. <1440> 革新,刷新
2. <1596-97,> 革命,叛乱

ですね.

次に,invention(発明)と対比させてみたいと思います.
invent はラテン語の inventus に由来し, inveire は, to come upon, discover, contrive という意味で, IN- + venire = to come です.
come ということで,「なにかやってくる」ということです.
使われ方としは,
1. <1475-1887> 偶然見つける,発見する
2. <1538> 発明する
です.

invention は,(L.) inventiō に由来します.
1. <1421> 発見
2. <1526> 発明,発明品

この2つのことから,なにがわかるかというと,innovationは,なにかを新しくすること,inventionは,やってくる,発見する,つくりだす こと.
Innovationは,renewalしていくということですから,無からなにかをつくりだすinventionとは違って,「いまあるもの」を使って,その組合せを変えていくことを示しているということです.

ある意味,Innovationは,「編集」という作業にも似ているのかもしれません.
edit 的な要素を少なからず孕んでいることになります.

さらにいうとブリコラージュに近いものがあるかもしれません.
ブリコラージュは,Claude Lévis-Strauss によって提唱された概念です.
特徴を箇条書きにしてみると,

・ あり合わせの物でつくる物,事である.
・ 同じ材料を使って行うこのたゆまぬ再構成の作業の中では,前には目的であったものがつねに次には手段の役にまわされていく
・ 出来事の集合を分解したり組み立てなおしたり・・・交互に目的となり手段となるような構造的配列を作り出そうとする

ということです.ブリコラージュは,ただ計画的なものではなく,自然にやっていることが「編集」とは違う点です.しかし,このような試みを意識的にやってみることで,Innovationがうまれる可能性があります.

“archiperago”

“archiperago”ということに関して書いてみようと思います.

「アーキペラゴ」とは,群島ないし多島海ということを意味します.
また大文字で Archiperago と書くと,エーゲ海を指します.
人類学者の今福龍太さんによって提唱されている概念ですが,非常に示唆に富み,面白いので,自分のブログのタイトルとして用いさせていただきました.

群島ないし多島海ということは,海のなかに島が点在していると考えてもいいし,島のある海とも考えられるもの.海であり,島であり,そのどちらにも安定しない.そして,海というのは,境界線がなく,流動的.この「アーキペラゴ」という言葉のもつimageは,とてつもなく広がりをもっていて,同時にその詩的なものに,つい魅了されてしまうとこがあるような気がします.

また archi- は,「原型,祖型」を意味し, -perago は,「海」を意味していて,「アーキペラゴ」は,「始原の海」ともいえる.それは原初的であると同時に,根元的であり,imageとしては,まっさらなもので,そこにどんな絵柄を描きこむこともできる.

そんなことをこのBlogに書いていけたらいいなと思ってます.
いままで,あまりoutputしてこなかった知識や思いを,まっさらな「アーキペラゴ」に描いてみたい.
そのときどきで,学んだことや経験したことを書いていきます.